【インタビュー】マニック・ストリート・プリーチャーズ「異邦人の感覚を味わうのはすごくいいことだ」

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マニック・ストリート・プリーチャーズが4thアルバム『Everything Must Go』の20周年を記念しUKやヨーロッパで開催したスペシャル・ツアーが、11月いよいよ日本に上陸する。日本に行くことを考えるとハッピーになるというニッキー・ワイアー(B)が、20年経っても色褪せることのない、メンバーにとってもファンにとっても特別な1枚『Everything Must Go』、そのツアー、そしてソングライティングや日本への想いについて語ってくれた。

◆マニック・ストリート・プリーチャーズ画像

――いよいよ『Everything Must Go』20周年ツアーが日本に上陸します。UKでの反応はいかがでしたか?

ニッキー・ワイアー:これまでで最高のツアーの1つだよ。ヨーロッパ、エストニアでスタートし、各国を周って、UKツアーを開催し…、やればやるほど良くなっていく。『Holy Bible』でも同じようなツアーをやったけど、あっちはもっとスケールが小さかった。今回は規模が大きく、たくさんの人と『Everything Must Go』を通じ繋がることができて、すごく楽しんでいる。

――長いことプレイしていなかった曲もあると思いますが、リハーサルや実際の公演で大変だなと思ったものはありましたか?

ニッキー・ワイアー:何曲かあったね。とくに「Interiors」はデリケートな曲で、18年か19年プレイしてなかったから、最初は大変だった。高い声出さなきゃいけないし、ジェームスは毎晩、ボロボロだ(笑)。「Further Away」もものすごく長いことプレイしていなかった。この2つを再発見できたのは良かった。オーディエンスも一緒に歌ってくれるし、昔の曲でまたこうやって彼らとコネクトできるのは素晴らしいことだよ。

――(『Everything Must Go』を全曲プレイした後の)後半のセットリストは毎晩少しずつ違うようですが、どうやって選んでいるのですか?

ニッキー・ワイアー:プレイしたい曲がたくさんあるから難しいんだよ(笑)。その国によって変えたりしているんだ。国によって人気がある作品が違うからね。日本のためには、「Born To End」とか『Generation Terrorists』からの曲をいくつか練習している。

――『Holy Bible』も20周年ツアーがありましたが、全てのアルバムで記念ツアーを計画しているのでしょうか? それとも『Holy Bible』と『Everything Must Go』は特別?

ニッキー・ワイアー:そうだね、この2枚は特別だと思うよ。でも、将来、他のもやるかもしれない。僕ら『Rewind The Film』(2013年)と『Futurology』(2014年)って2枚のアルバムを立て続けに作って、ちょっと息抜きする時間が欲しかったんだ。それで、時期的にも『Holy Bible』と『Everything Must Go』を振り返るのはいいなって思った。いま具体的な計画はないけど…、ずっと、日本で『Generation Terrorists』をやりたいって思い続けているんだ。だから、もしかしたらいつかやるかもしれない。

――『Everything Must Go』を制作していた時期は、バンドにとって辛い、そして節目のときだったと思いますが。


ニッキー・ワイアー:アルバムを作ること自体はそれほど大変ではなかった。その前だ。僕ら、バンドを続けるべきかどうか悩んでいた。友人を失うなんてとても辛い出来事だからね。あのときは、バンドとして存在していたんじゃなく、大切な友人を失った仲間っていう状態だった。「Design For Life」ができなかったら、僕ら続けることにしていたか、わからない。

――もしタイムマシンであの当時に戻れたら、自分になんて声をかけますか? どんなアドバイスをあげたい?

ニッキー・ワイアー:ハハ、たくさんあるよ(笑)。正直に言えば、もっと楽しめってことかな。あのときはもちろん、そんな気分じゃなかったからね。流れに身を任せて、もうちょっと楽しめよって思うけど、でも、いいアルバム作ろうって考えているときに相応しくないかもしれないな。僕は的確なアドバイスができる人間じゃないんだよ(笑)。

――『Everything Must Go』を3文字で表すと?

ニッキー・ワイアー:メランコリック、躍動…、それにもうひとつは…、ビューティフルだ。

――『Everything Must Go』がバンドのキャリアで傑出したアルバムなのは間違いありませんが、ほかにも同じように感じている作品はありますか?

ニッキー・ワイアー:『Generation Terrorists』は間違いなくそうだね。デビュー・アルバムで、僕らを世に送りだした。それに『Holy Bible』は『Everything Must Go』とセットになっていて、2枚ともすごく重要な作品だ。それから『Send Away The Tigers』と『Futurology』かな。『Send Away The Tigers』はストレートなロック・アルバムだけど、パワーがあり、昔からのファンはもちろん、新しいファンとも繋がることができた。『Futurology』はレビューもセールスも良かった。

――30年やってきて、ライターズ・ブロックを経験したことはありますか?

ニッキー・ワイアー:そういうものはなかったかな。バンドを始めたときから、音楽を通じて表現したいことは持ち続けている。ただ、40代半ばになって、スローダウンしつつあると思う。『Futurology』をリリースしたのが2年前で、次のアルバムを完成するのに少なくてもあと1年はかかる。若いころより時間をかけるようになった。

――想像上の物語と実体験、どちらを歌詞にするほうが自然ですか?

ニッキー・ワイアー:そうだな…、難しいな。正直言って、年を取りある程度の生活をしていて、それなのに曲の中で怒ったり叫んだりしているのは“本物”じゃないって気がする。だから、そういった感情をもっと詩的に表現しようとしている。社会的な問題を話すにしろ、ストレートじゃなく、もっと詩的に語りたい。何も気にしていない、責任もなかった25歳のときのようにはいかないよ。

――ソングライターで尊敬する人は?

ニッキー・ワイアー:たくさんいるけど…、モリッシーの詞は僕の人生に一番大きな影響を与えた。それにジョン・ライドンの物の見方、イアン・マッカロクのヴォーカル表現の美しさ。ミュージシャンじゃなければ、フィリップ・ラーキン、とくにシルヴィア・プラスには大きな影響を受けている。

――5年ほど前、ジェームス(・ディーン・ブラッドフィールド)にインタビューしたとき、彼は「シンガーはユニークな立場にあり、たいていは他の誰かが書いた曲を歌っている。だからいつも、詞をちゃんと理解した後で曲を書こう、歌おうという責任を感じている」と話していました。あなたが詞を書くとき、特定のアイディアやイメージがあると思いますが、ジェイムスの作った音楽や歌い方に注文をつけることはありますか?

ニッキー・ワイアー:それはものすごく稀だね。この20年で1~2回くらいだと思う。「My Little Empire」で、これはニルヴァーナのアンプラグドみたいにアコースティックでソフトじゃなきゃいけないって言ったけど、そういうのはすごく稀だ。いつも満足している。イメージ通りのときもあるし、イメージしたものとは全然違うけど、それがすごく良かったってときばかりだよ。

――3人の間で危機を経験したことはありますか?


ニッキー・ワイアー:うーん、多分ね(笑)。ジェームスのことは5歳のときから知っているし、ショーンも同じようなもので、危機と呼べるかわからないけど、バンドの方向性とかそんなことで対立したことはある。でも、バンドとしてっていうだけだし、それは価値のあるものだった。

――ニュー・アルバム、あとどれだけ待たなくてはなりませんか?

ニッキー・ワイアー:かなり長いこと(笑)。曲を書き始めたばかりだし、スタジオの引っ越しもあるし、かなりかかるね(笑)。そうだな…、多分、あと1年半かな。来年、一生懸命やるつもりだよ。

――最近、もうアルバムは作らないと話すミュージシャンも少なくありませんが…

ニッキー・ワイアー:そうだね、どうしてそうなるのか僕はわからないけど。僕らは作ることを楽しんでいるし、アルバムは間違いなく自分らにとって、それからハード・コアなファンにとって大切なものだと思っている。僕らがワクワクしながら作っている間はいい。でも、曲がネットで簡単に手に入る今、だんだん難しくなっているのは確かだよ。若い世代、とくにUKの若い子はアルバムを買いたいなんて思っていないんだから。僕は間違いなく、この時代デビューするバンドにはなりたくないよ。

――私はあなたと同世代なんですが、この年になると、ものの見方や態度が若いときとは違いますよね。あなたは、“怒りっぽい頑固親父”と“丸くなった穏やかなおじさん”と、どちらになりつつありますか?

ニッキー・ワイアー:ワハハ、そうだなあ(笑)…、少しだけ気難しくなくなったと思うよ。前よりかっとすることも減ったな。それは頭の回転が鈍くなったってことかもしれないけど(笑)。それは残念だけど、いい意味で気難しくなくなった。疲れちゃうからね(笑)。

――では、いまあなたを幸せにすること、逆に怒らせることはなんでしょう?

ニッキー・ワイアー:この時期は葉っぱの色が変わったり、僕が住んでいるところの景色がすごく美しくて、それにはインスピレーションを貰うね。それに、日本へ行くこと、これは僕をハッピーにする(笑)。だって素晴らしい場所で、いつだってインスピレーションをくれるんだ。怒っているのは、デジタルが僕らの生活に浸透し過ぎていることだね。デジタル関連の企業がときとして政府以上の影響力を持つのは、恐ろしいことだ。

――今回、日本でやりたいことはありますか?

ニッキー・ワイアー:東京を歩き回りたい。1人でポラロイドカメラ持って、何時間も歩き、道に迷い、写真を撮って食事をする(笑)。日本でそういう時間を持つのって、すごく好きなんだ。

――バンドが成功し、家族もいる今でも、そういう“道に迷う、途方に暮れる”という感覚を持つのは好きですか?

ニッキー・ワイアー:ああ、曲を作るのにとてもいいことだと思うよ。日本に行くと時差ボケで、よく朝の6時とか7時に1人で散歩に出るんだ。朝早く、いい歌詞が浮かぶってこと、よくある。異邦人でいられる感覚って、そうどこでも味わえるわけじゃない。日本は間違いなく、そう感じられる場所なんだ。北海道で雪の中を歩き回り、道端で売っている大きなヤキイモを食べたことがある(笑)。そんな体験、どこでもできるってわけじゃない。異邦人の感覚を味わう、それは曲作りにすごくいいことだ。

――いろんなことを成し遂げたいまでも、まだやり残したと感じていることはありますか?

ニッキー・ワイアー:そうだね、もう1曲、特別な曲を作りたい。一体感を持てる曲…、コーラスになるのかもしれない。すぐそこにあるような気がしているんだ。

Ako Suzuki


『エヴリシング・マスト・ゴー』20周年記念ツアー日本公演

11月8日(火)
@新木場スタジオコースト
OPEN 18:00/ START 19:00
1F オールスタンディング¥8,000 | 2F 指定¥9,000(税込/別途 1 ドリンク)※未就学児入場不可
一般プレイガイド発売日:8/27(土)
[問]クリエイティブマン 03-3499-6669

11月9日(水)
@なんばHatch
OPEN 18:00/ START 19:00
1F オールスタンディング¥8,000 | 2F 指定¥9,000(税込/別途 1 ドリンク)※未就学児入場不可
一般プレイガイド発売日:8/27 土)
[問]キョードーインフォメーション 0570-200-888
制作・招聘:クリエイティブマン 協力:ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル

『エヴリシング・マスト・ゴー』(20周年記念盤)

2016年5月25日発売
¥3,500+税 SICP 4782~4783
※輸入盤限定ボックス・セットは5月20日発売予定
通常盤(2CD盤)*日本盤はこの1種のみ
[CD1](『エヴリシング・マスト・ゴー』 2016年リマスター盤)
1.Elvis Impersonator: Blackpool Pier (エルヴィス・インパーソネーター:ブラックプール・ピア) 
2.A Design for Life (ア・デザイン・フォー・ライフ)
3.Kevin Carter (ケヴィン・カーター)
4.Enola/Alone (エノラ/アローン)
5.Everything Must Go (エヴリシング・マスト・ゴー)
6.Small Black Flowers That Grow In The Sky (スモール・ブラック・フラワーズ・ザット・グロウ・イン・ザ・スカイ)
7.The Girl Who Wanted To Be God (ザ・ガール・フー・ウォンテッド・トゥ・ビーゴッド)
8.Removable (リムーヴァブルズ)
9.Australia (オーストラリア)
10.Interiors(Song For Willem De Kooning) (インテリアーズ(ソング・フォー・ウィレム・デ・クーニング))
11.Further Away (ファーザー・アウェイ)
12.No Surface All Feeling (ノー・サーフェス・オール・フィーリング)
[CD2](ライヴ・アット・ナイネックス)
1.Everything Must Go (エヴリシング・マスト・ゴー)
2.Enola/Alone (エノラ/アローン)
3.Faster (ファスター)
4.Kevin Carter (ケヴィン・カーター)
5.La Tristessa(Scream To Sigh) (悲しみは永遠に消え去らない)
6.Removables (リムーヴァブルズ)
7.Roses In The Hospital (ローゼズ・イン・ザ・ホスピタル~囚われた快楽~)
8.Elvis Impersonator: Blackpool Pier (エルヴィス・インパーソネーター:ブラックプール・ピア) 
9.The Girl Who Wanted To Be God (ザ・ガール・フー・ウォンテッド・トゥ・ビーゴッド)
10.Motown Junk (モータウン・ジャンク)
11.Motorcycle Emptiness (享楽都市の孤独)
12.No Surface All Feeling (ノー・サーフェス・オール・フィーリング)
13.This Is Yesterday (ディス・イズ・イエスタデイ)
14.Small Black Flowers That Grow In The Sky (スモール・ブラック・フラワーズ・ザット・グロウ・イン・ザ・スカイ)
15.Raindrops Keep Falling On My Head(Acoustic)
(レインドロップス・キープ・フォーリング・オン・マイ・ヘッド/雨にぬれても)(アコースティック)
16.Yes(イエス)
17.Australia(オーストラリア)
18.Stay Beautiful (ステイ・ビューティフル)
19.A Design for Life (ア・デザイン・フォーラ・イフ)
20.You Love Us (ユー・ラヴ・アス)

●生産限定ボックス・セット *輸入盤のみ取り扱い

[CD1](『エヴリシング・マスト・ゴー』 2016年リマスター盤)
[CD2](Bサイド集)
1.Hanging On
2.No One Knows What It's Like To Be Me
3.Everything Must Go(The Chemical Brothers Remix)
4.Everything Must Go(Stealth Sonic Orchestra Remix)
5.Everything Must Go(Stealth Sonic Orchestra Soundtrack)
6.Raindrops Keep Falling On My Head(Live Acoustic Version)
7.Horses Under Starlight(Instrumental)
8.Sepia
9.First Republic
10.Kevin Carter(Busts Loose)(Remixed By Jon Carter)
11.Kevin Carter(Stealth Sonic Orchestra Remix)
12.Kevin Carter(Stealth Sonic Orchestra Soundtrack)
13.Everything Must Go(Acoustic Version)
14.Velocity Girl
15.Take The Skinheads Bowling
16.Can't Take My Eyes Off You
17.Australia(Lionrock Remix)
[DVD1](ライヴ・アット・ナイネックス)
1.A Design for Life(Stealth Sonic Orchestra Remix)
2.Everything Must Go
3.Enola/Alone
4.Faster
5.Kevin Carter
6.La Tristessa(Scream To Sigh)
7.Removables
8.Roses In The Hospital
9.Elvis Impersonator: Blackpool Pier
10.The Girl Who Wanted To Be God
11.Motown Junk
12.Motorcycle Emptiness
13.No Surface All Feeling
14.This Is Yesterday
15.Small Black Flowers That Grow In The Sky
16.Raindrops Keep Falling On My Head(Acoustic)
17.Yes
18.Australia
19.Stay Beautiful
20.A Design for Life
21.You Love Us
[DVD2](フリード・フロム・メモリーズ+MV集)
1.A Design for Life
2.Everything Must Go
3.Kevin Carter
4.Australia
他、新規獲り下ろし映像収録

[VINYL](180g アナログLP)
[40 Page Book]
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